第二回日韓次世代フォーラムを終えて気づきと学び / 中村一星


 今回の日韓フォーラムはわたくしにとって、とても良い経験になった。日本と韓国は、嫌韓、反日といわれるようにお互いに憎しみ合っているというイメージがどうしても先行してしまうと思う。お隣の国にもかかわらず、お隣の国であるからこそ、政治や外交の面でも対立してしまうし歴史問題を背景にしてもお互いの嫌悪感情は激しいものだ。今回のフォーラムの趣旨はそうした嫌悪感情を話し合いと交流によって考えていこうという試みだった。国際交流を通していろんな国に友達を作りたいという思いを持つわたくしにとって、今回のフォーラムほど、深い話し合いを持って、日韓関係を議論したのは初めてである。参加した理由は大学の国際交流室から流れてきたお知らせを見て、国際交流に興味があるしおもしろそうだと思ったからであるが、このフォーラムは韓日社会文化フォーラムが主催したプログラムであり、ただの国際交流ではなく日韓の相互理解のために様々な催しが企画されていた。基本的にはグループワークで日本人と韓国人で半々で構成されていた。わたくしは全く韓国語ができないのだが、参加者の中には通訳者がいて、韓国人は日本語が、日本人は韓国語が話せる人がたくさんいたので、大変驚きました。

話し合いの中ではどのようにしたら日韓関係を良いものにしていけるのかということを、様々な視点から考えて話していたのだが、わたくしたちのグループでは、メディアの商業主義と記者の偏った考え方が、民衆に働きかける影響が一番の問題であると結論付けました。なぜなら、日韓関係にそもそもあまり興味のない中間層の人々が全国民の中で大多数を占めている現実がある中で、メディアが偏った情報を報道すれば、その中間層の人々の考え方まで偏ってしまうだろうとの考えがあるからである。このようにグループディスカッションを行うことで、お互いの国の意見を出し合い、より堅実な結論に導くことができる上に、話し合いを通じることで交流もすることができるよく考えられているプログラムだと感じた。また、真面目な話し合いのほかにも飲み会や大人数部屋でくだけた話をして笑いあっているときは、国家間の関係は関係なく、とても楽しかった。国は違えども、国の仲が悪かろうとも、個人間の関係においては絶対に分かり合える。このような一人一人の理解を積極的に広げていくことで、国同士も分かり合える日がくればよいと願っている。

この一泊二日のフォーラムを通すことで、今まで気づくことのできなかった日本人と韓国人の様々な違いも発見することができた。まず、グループディスカッション中に感じたことだが、韓国人は自分の意見を言うことに躊躇がないと感じた。日本人サイドは本音と建て前という美徳があるというように、違うと感じた意見についても、「このことをいいかえしたら相手にどうおもわれるだろうか・・・」と、まず初めに頭で考えてしまって、なかなか自己主張ができないのだが、韓国人サイドは、一人が意見を言い終えたら続けて次の人も意見を言うというように自分の意見を持つ人が多いように感じた。

また、わたくしが日韓フォーラムに参加する為にインチョン空港から空港鉄道を利用して会場まで向かっていた際、空港鉄道の電車内では、ずっと、「独島は韓国の領土である。」と主張する広告の動画が韓国語に加えて英語字幕でながれていました。この光景は日本ではありえないように思う。日本でも確かに「竹島は日本の領土である。」との主張はいたるところにあふれていますが、空港からソウル市内に向かう鉄道にてここまで露骨に主張するのかと驚きと恐怖を感じた。このように、主張の仕方一つとっても日本と韓国で違いがあるということは発見だった。フォーラム一日目の座談会にて、韓国と日本の大きな問題である竹島こと独島の問題だが、日本人メンバーよりもその問題についてはるかに多くの知識と時代背景を認識していた。また、その知識についてメディアの報道を鵜呑みにするのではなく、しっかりと自分の意見を持ったうえで、発言していた。独島はこういう理由で韓国の領土であるというように。わたくしは、同じ大学生だがここまで日韓関係とその問題について真剣に向き合っている韓国の学生に対してとても驚いた。それとともに、自分の知識量の不足に気づき、ここまで真剣に考えている韓国人に対して申し訳なく感じたとともに、これからは自分もニュースに対して関心を持ち自分の意見を持つようにすると決意することができた。

 しかし、日韓でも個人個人を見ると大きな違いはないように思う。今回、わたくしは韓国人の温かい優しさに触れあうことができた。嫌韓・反日といわれている世の中ですが、個人で見ると、お互いの国の情勢を理解したうえで相手国が好きで、国際交流を通して分かり合いたいと望んでいる人が沢山いることがわかる。相手を批判することで、自己のアイデンティティーを守ることができるとの考え方もあるようだが、自分の意見としては、そんなことにどんな意味があるのか理解できない。フォーラムを通してわかったことは、話し合いを通じてお互いの意見を交換し合うことで、相互の認識の誤解を解きほぐされてより深く相互理解を進めることができるということだ。批判をすることは簡単だが、国家間の関係がおもわしくないこの状況の中で、お互いに歩み寄ろうとすることは難しく、それを試そうとする人もまだ少ないが、こうした日韓人の交流を続けること。また、その考え方を広めていくことがとても重要であると考える。次世代を担う大学生が日韓の相互理解の見聞を深め合う意義は大いにあり、将来の日韓関係にとってプラスであることは間違いないように思う。これからも、「相互理解」と「国際交流」をキーワードに日韓関係をより良いものにしていく努力をしていこうと思う。日韓の認識の悪い誤解が解かれ、国全体が手と手を取り合えるような関係になれることをわたくしは期待したい。