◆ゼノフォビアはなぜ発露するのか。

   ゼノフォビアは平時は人々の意識の中に潜んでいるが、外国人の存在が脅威として感じられた時に表に出て来る。それではゼノフォビアが発露されて動き出すのはいつなのか。良く言われれる「ゼノフォビアは経済的貧困から来る怒りの表明」という言説は根拠がないと打倒しても何度もよみがえる議論という意味で「ゾンビ理論」と形容されている。排外的ナショナリズムの台頭は打ち捨てられた人々の怒りや苦しみの発露によるものではない。むしろ多様な階層を含む文化的意識の問題である。人は経済的利害ではなく非経済的信念によって政治的・社会的行動をとっている。2000年以降日本と韓国で発露されたゼノフォビア現象を取り上げて比較してみよう。両国で発露された外国人嫌いとしては、日本のヘイトスピーチ、韓国の朝鮮族問題がある。

 日本政府は外国籍居住者を頑なに「移民」とは認めていないので、国レベルでの適切な社会統合政策は皆無だった。日本では外国人が差別を受けることも多く、各種の人権侵害なども多発している。日本では外国人の人権が保護されなかった制度的理由は、国レベルでの外国人対策を拒んでいたので外国人の法的地位が危うい状態だったということと、社会的弱者と女性に対する認識が保守的なままだったからである。

 

戦後日本の人文社会科学は人種・民族問題に冷淡であり、差別研究が低調である。日本では人種・民族の研究が本格的に始まったのはやっと90年代に入ってからのことであり、それも欧米から「エスニシティ」という概念が輸入されてからその重要性が認知されるようになったためであった。2000年代前半をピークにある種の流行のように在日コリアンやアイヌ、日系ブラジル人などを対象とした研究が増加したものの、人種差別そのものにフォーカスした研究はきわめて少なく、またすでにエスニシティに対する関心すら薄れてしまっている。

 

戦後日本の歴史上、裁判所は人種差別(の撤廃)について、国や自治体の責任を認定し

たことは一度もない。国際人権条約と憲法以外に差別を禁じる国内法が存在しない

 

「MIPEX(移民統合政策指数)」という指標がある。移民に関する各国の社会統合政策の質を測るものだ。

日本は他国に比べて総合スコアが低いが、全8指標の中で特に低スコアなのが「政治参加」と「反差別」の分野である。

 2020年12月に、5回目となる調査結果(MIPEX2020)が公表されました。具体的には、52か国の移民統合政策を対象に、8つの政策分野(労働市場、家族呼び寄せ、教育、政治参加、永住、国籍取得、反差別、保健)について、167の政策指標を設け、数値化しています。数値化の作業は、各国の移民政策研究者が協力して行っています。日本からは、近藤敦名城大学教授と筆者が参加しました。

 総合的な評価では、スウェーデンが1位(86点)となり、フィンランドが2位(85点)、ポルトガルが3位(81点)となりました。4位以下10位まで、カナダ、ニュージーランド、アメリカ、ノルウェー、ベルギー、オーストラリア、ルクセンブルクとなっています。アジアでは、韓国が19位(56点)で最も高く、日本は35位(47点)です。

 日本の評価は、分野別にみると、労働市場59点、家族呼び寄せ62点、教育33点、政治参加30点、永住63点、国籍取得47点、反差別16点、保健65点となっており、保健や永住、家族呼び寄せが比較的高く、反差別、政治参加、教育が低い評価となっています。